石仏石神を求めて

おもに石仏・石神などの石造物を探訪

庚申塔群(北津軽郡鶴田町廻堰・丹頂鶴自然公園)

青森県北津軽郡鶴田町廻堰字西下山の丹頂鶴自然公園(訪問日:2024年1月3日)f:id:nagatorowo2:20240210110649j:image県道200号線沿い、鶴の舞橋で知られる廻堰大溜池(津軽富士見湖)の畔に丹頂鶴自然公園があり、学びのゾーン内の松の群生地に隠れるようにして庚申塔が弧を描く形で計8基置かれています。
f:id:nagatorowo2:20240210110653j:imageそばには解説板も設けられていました。
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解説板 庚申さま
 庚申さま信仰は全国的に広い分布を持ち、津軽でも「庚申」の文字を刻彫った石塔が、ほとんどの集落の入口か産土神さまと呼ばれる神社の境内に建っている。年号は古いのは元禄、新しいのは昭和まで、その数は千三百以上になるという。鶴田町の庚申講も江戸時代に遡ることができ、この廻堰の庚申塔(庚申塚、とも呼ぶ)の中には県内最大の塔がある。塔はほとんどの集落にあって、こうしたことからも鶴田町の庚申さま信仰の広さと深さが知れる。
 「庚申」の日には夜宿に集まって、お掛け図を飾り、お神酒を供え、全員声をそろえてお祈りを唱える。これが終わると皆で飲食して賑やかに話し合う。この夜は寝ないで起きていなければならないという戒めがあって、「話は庚申さまの晩だ」の諺どおり一晩中農作物や世間話などで語り明かしていた。
 「庚申」の日は、六十一日目に回ってくるので平年には六日あるが、閏年の正月から始まると、その年には七回になる。これを七庚申という。すると翌年は五庚申になる。農村では庚申さまは稲作と深い関係があると考えられ、「七庚申のケガジ(飢渇)なし」といって、その年は豊作だと信じられ、反対に「五庚申の鎌いらず」といわれ、凶作の心配があるから、早生稲を植えつけて仕事を急がねばならないとされた。
 五庚申・七庚申に当たる年に、庚申さまのツカというものたてる。田植え前後の「庚申」の日にたてるのがく、このときには、村中がこぞって参加した。ツカというのは、杉、檜、ときとしてサワラなどの常磐木で約三メートル余りのを切り、こずえに葉を残してその下を四角に削り、そこに神主に「五穀豊穣、村中安全」などの文句を書いてもらう。その上部に板をつける。板は山の形に切り、それに満月と三日月の絵をかく、それに麻糸を長く垂れかけ、ほかに朱塗りの椀や鏡、扇などをつけることもある。たてる前に数人でこれをかつぎ、かけた麻糸に村人が大勢つかまって、神主を先頭にして笛、太鼓ではやしながら集落中を回ってから、産土神さまの境内か集落の入口の路端にたてた。
 庚申さまは津軽では「作の神さま」という。作を頼む神、ヨノナカ(稲作のこと)についた神だと信じられている。だからツカのこずえに登って、いつも作物の実りを見ていてくださるという。また日照りには雨を降らせ、長雨には日を照らしてくれる神さまともいわれる。また集落の入口にツカを立てるのは、集落に疫病が入るのを防いでくれるとか、幸福や金運を授けてくれるとか、津軽の農民にとっては、切実な農作を祈る神としてばかりではなく、現実的な人生の希望を託す神にもなっていた。

多少の改変はありますが、内容のほとんどは『鶴田町誌』からの引用のようです(孫引き)。

ツカ上げ(庚申のツカ)に関する解説を含む解説板の中では最も充実した記述が揃っています。


f:id:nagatorowo2:20240210110701j:image前述の通り、ここには8基もよ庚申塔が並びます。
f:id:nagatorowo2:20240210110705j:imageすべて文字塔です。
f:id:nagatorowo2:20240210110709j:image時計回りに掲載していきます。

f:id:nagatorowo2:20240210112751j:image文字庚申塔

刻銘「弘化三午年三月五日(1846) / 庚申」


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刻銘「文政五午年六月日(1822) / 庚申塔


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刻銘「文化八未年八月日(1811) / 庚申塔


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刻銘「昭和七申年旧九月廿七日(1932) / 講中 / 庚申塔


f:id:nagatorowo2:20240210112735j:image文字庚申塔猿田彦大神塔)⑤

刻銘「文化六年巳九月二十□(?)日(1809) / 猿田彦大神


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刻銘「弘化二巳年二月日(1845) / 庚申塔


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刻銘「嘉永七甲寅年三月二十一日(1854) / 講中并邑中 / 種子〈アーンク〉 / 庚申塔


f:id:nagatorowo2:20240210112722j:image文字庚申塔

刻銘「安政七庚申年閏三月二十六日(1860) / 講中 / 庚申塔

 

f:id:nagatorowo2:20240210115331j:image⑦の文字塔は津軽地方最大の庚申塔で、塔高280cm・塔幅255cm・塔厚80cmを有します。写真だと伝わりづらいかもですが、実物はもう本当にとんでもないデカさです。

山形県にはさらに大きな庚申塔が現存しているらしいので、いずれ見に行きたいです。

丹頂鶴自然公園の所在地