香川県東かがわ市引田の萬生寺(訪問日:2024年8月14日)讃岐三十三観音霊場の第七番に数えられる寺院です。利剣山菩提心院萬生寺と号します。真言宗善通寺派。かつては延命息災を願ったキュウリ加持なる行事があったそうですが、現在も行われているかは分かりません。寺号標のそばに堂宇が建っています。中にはかなり大きめの石仏が祀られています。子安地蔵尊。この仏さまについて、『引田町史』民俗編の252頁に解説が載っています。
引田の利剣山菩提心院萬生寺の入口の道路に面して子安地蔵尊が祀られている。地ぞうさんは六道の辻に立て、冥界の苦しみや旅人を助け、子供の守り本尊として、安産や子供の安全を守る仏、又、目すがたのすずしい所から、眼を守る仏さまとして古くから信仰・又多くの人が願かけしている。
奉納の手洗、花立、仏具の当番は亀谷茂・四宮京太郎・松本治義・亀井義文・荻野憲司・武田コナミ・安部豊・下地カズエ・安本ハルエ・板坂リン・鳥飼テルミ・橋本秋夫・上田茂らである。香川民俗学会 ほか『引田町史』民俗,東かがわ市. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/11517108 (参照 2024-08-21)
また、同書の口絵にも地元の人がお参りしている様子が写っています。
山門右手には「ブギウギのまち東かがわ 笠置シヅ子ゆかりの地をめぐる」と題した案内板があり、当寺もそのゆかりの地の一つとして紹介されています。
山門左手には以前に掲載した廻国供養塔があります。また、笠置シズ子氏が本堂銅製樋の寄付を行った際に建てられた記念碑も置かれています。
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本堂本題の庚申霊場について。境内の左手に修行大師像と並んで大変立派なお堂が建っています。こちらは庚申堂で、香川県東部の庚申信仰を知る上で重要な仏堂です。
訪問当時、堂は既に開扉していました。普段は閉じてるかもしれません。
住職さんのご厚意で拝観させていただきました。
掲示が2枚。それぞれ「御本尊 青面金剛」「御真言 おんでいばやきしゃばんだばんだかかかかそわか」と記してあります。「庚申堂」扁額堂内。中央に青面金剛明王像、右手に弘法大師像、左手に三猿像がそれぞれ逗子に納め祀られています。奉納南無地蔵菩薩と南無大師遍照金剛の幟。そばには「萬生寺厄払観音ご詠歌 万生をたすけたまえるみほとけのじひの光りはうらにはえゆく 昭和五十五年庚申吉祥」の額が立てられています。当寺の本尊である厄除け観世音菩薩の幟もありました。棟札には「奉新建庚申堂一宇為両親頓證菩提」とあります。仏教への篤い信仰心が窺えます。平成2年に奉納された般若波羅蜜多経も掲げられています。三猿像を納める厨子の前に庚申堂本尊の青面金剛明王の写真が立てられています。三猿像。「見る・聞く・言う」とあり、三猿の教えを説いているようです。その脇には青面金剛について記した由来書きもありました。
本尊・青面金剛明王の祀られた厨子。何重にも連なった千羽鶴やくくり猿、吉祥飾紙が庚申さまを囲むように納められています。
吉祥飾紙には説明があり、「莚壽飾紙故事(しあわせひろがるかざりがみのいわれ)
この吉祥飾紙は、仏間・床の間・玄関などに一年中お飾りするもので、古来より家運を隆昌させ、魔を除き福を招く〆飾りとして慶ばれています。
新春を迎えるに当たって、家内安全と無病息災、また迎える歳が良き歳でありますよう祈念して、お飾りください。」と記されています。青面金剛明王の御尊容(像容)は全身青色(緑色)の一面六臂の立像。火焔光を纏った円形光背を背負い、怒髪天を戴き、持物は宝棒、羂索、宝剣、宝輪、戟。ショケラを持つべき手には何も持っていません。邪鬼の姿も確認できません。
こうしてまじまじと庚申霊場のご本尊を拝観する機会はなかなかないので、非常に勉強になりました。
いつまでも庚申さまが人々ないし世の中に安寧をもたらし、そして人々が庚申さまを崇めつづけることを心より願っています。
萬生寺の所在地