石仏石神を求めて

おもに石仏・石神などの石造物を探訪

津軽地方の庚申塔 #146(青森市沖館5丁目・沖館稲荷神社)

青森県青森市沖館5丁目の沖館稲荷神社(訪問日:2023年9月18日)f:id:nagatorowo2:20240710115316j:image倉稲魂命須佐之男命、大市姫命の三柱を主祭神として祀る神社です。
境内には庚申塔が並べられており、それに対応する解説板がそばに設けられています。f:id:nagatorowo2:20240710115241j:image

解説板① 庚申塚について
 これは、遠い昔からの言い伝えじゃ。人の腹の中には、三尸と呼ばれる三匹の虫がおってな、庚申の日の夜になると、人が眠っている間にからだの中から抜け出して天に昇り、その人の悪罪を偉い神様に告げるんじゃと。そうすると、その人の命が縮められてしまうんじゃ。そこで庚申の日には猿田彦大神を太陽の神・月の神・星の神・食物の神たちと共に祭って、虫が出ていかないようにと祈ったんじゃ。
 猿田彦命は道案内の神であるが、ものすごくおっかない顔をしているわりには、とても気持ちのやさしい神様でな、虫を押えつけて天に昇れんようにしてくれたんじゃと。
 これらの神様を奉った所を庚申塚といってな、人々はここで祈ったあと、食べたり、飲んだり、話しをしたり、唄ったり、踊ったりなどして、楽しく夜を明かしたんじゃと。
昭和庚申年 献納 錦付書

 

翁口調での解説です。語り部のようでなかなか面白いです。天帝であるところを「偉い神様」に置き換え、庚申さまを猿田彦としているように、道教や仏教の色を排し神道の立場から庚申待を説いています。

星の神や食物の神などと共に祀るという点は、非常に面白い説明です。本来の庚申縁起とはかけ離れていますが、当地特有の庚申のお祭りの仕方だったのでしょうか。あるいは単に石塔の並びや刻まれた神名から独自の解釈、符会的に解釈をした結果、このような文章になったのかもしれません。

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解説板② 鳥居
 神域を俗界から区別する門。俗界に近い方から、一の鳥居・二の鳥居・三の鳥居などと呼ぶ。
 参拝者はこの門より、通り入る時に、「祓い給え・清め給え」と心の中で念じ、身のけがれや罪を払い、清々しい気分で聖なる神域へと近づくのである。
 朱の色は、「炎」をあらわし、災をもたらすものや魔性のものを近づけないことを意味する。
 材質は、木材を本式とするが、近年はコンクリート製なども見られる。
 構造は、二本の柱と二本の横木とで組み立てられるのを基本とし、さらに、優雅さを出すためにいろいろなつくりをくふうしている。
 中国には華表・鷄栖、インドにはトラーナなどと呼ばれる似た形のものがあるが、起源や語源に定説はない。
昭和五十五年 献納 錦付書

こちらも翁口調。

f:id:nagatorowo2:20240710115318j:imageこちらが庚申塔群。右端のもの以外すべてに賽銭袋が掛けられています。背後にはツカ上げ(庚申のツカ)も確認できます。向かって右から掲載します。
f:id:nagatorowo2:20240710115334j:image文字庚申塔猿田彦大神塔)①


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刻銘「明和元甲申天九月十一日(1764) / 施主沖館村某古川村小田某(以下人名略) / 神猿田彦神阿奈猿田彦神猿田彦神

笠付角柱型、彫像(日天月天、瑞雲)


f:id:nagatorowo2:20240710115244j:image文字庚申塔猿田彦大神塔)②


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刻銘「文化六己巳年十一月四日(1809) / 願主生國勢州河之郡長田村森川藤蔵□飯邑加賀屋山三郎 / 猿田彦大神

自然石型、彫像(日天月天、瑞雲)


f:id:nagatorowo2:20240710115355j:image文字庚申塔猿田彦大神塔)③


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刻銘「安政二乙卯年六月吉日(1855) / 願主沖館村中 / 猿田彦大神

自然石型、彫像(日天月天、瑞雲)


f:id:nagatorowo2:20240710115331j:image文字庚申塔④・二十三夜塔①(猿田彦大神・月夜見命併刻塔)


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刻銘「明治四十四年五月二十三日(1911) / 沖館村中 / 猿田彦大神月夜見命」

自然石型、彫像(日天月天、瑞雲)


f:id:nagatorowo2:20240710115310j:image文字庚申塔⑤・二十三夜塔②(猿田彦大神・月夜見命併刻塔)


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刻銘「明治廿丁亥年九月廿三日(1887) / 願主柿崎源内 𣐈﨑源内 / 月夜身命猿田彦大神」※柿﨑源内は市内にある源内幼稚園の創立者

自然石型、彫像(日天月天、瑞雲)


f:id:nagatorowo2:20240710115252j:image馬頭観音塔・妙見神塔(馬像付保食神・妙見神併刻塔)


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刻銘「明治十七申年八月吉日(1884) / 柿崎源内 / 妙見大神保食大神」f:id:nagatorowo2:20240710115336j:image一馬像

おまけf:id:nagatorowo2:20240710115342j:image皇紀二千六百年記念碑f:id:nagatorowo2:20240710124250j:image道具の供養碑と「報徳の心」碑f:id:nagatorowo2:20240710124248j:image社殿

沖館稲荷神社の所在地