東京都文京区根津1丁目28-9の根津神社(訪問日:令和7年1月7日)
根津神社の境内角に、近傍から寄せ集められた石造物群(力石、庚申塔などで構成)があります。
平野実氏の著書『庚申信仰』にはこの庚申塔群(氏はこれを無縁仏とする)が取り上げられており、自身が銘文をスケッチしている様子を写した写真まで付されています。
その写真を見ると笠部が真ん中のセメント部分の上に載せられていて、現在のように各庚申塔の上には載っていなかったようです。

刻銘「寛文八戊申歳十月十八日(1668) / 武州豊嶋郡江戸駒込村 / □〜□楽也」※五甲申の日造立。
原刻字「武刕豊嶋郡江戸駒込村 / □〜□樂也」
御尊容(立像、開臂三面六臂、唐破風笠付角柱型)、その他像容・彫像(髑髏、宝輪、矢、羂索、三叉戟、弓、宝棒、蛇)
二鶏像(牡牝一対)と一猿像。御幣らしきものを持った猿が雄鶏と雌鶏に迫られています。
三猿像(基壇)


刻銘「宝永六己丑四月十九日(1709) / 武刕豊嶌郡駒込千駄本町施主石原氏(ほか交名9名略) / 奉建立庚申」※二庚申の日造立。
原刻字「寶永六己丑四月十九日」
御尊容(立像、合掌一面六臂、駒型)、その他像容・彫像(日天月天、蛇、瓔珞髑髏、矢、弓)
一邪鬼像と三猿像
文字庚申塔
刻銘「寛永九年壬申初春廿二日(1632) / 都嶋東馬米村(交名7名略) / 奉造立庚申供養一結衆二世成就攸 / 〈キャ種子〉」※初庚申の日造立。
板碑型
開敷蓮華像
刻銘「延宝八庚申歳六月吉祥日(1680) / 信心之願主内山彦兵衛」
御尊容(立像、一面六臂、唐破風笠付角柱型)、その他像容・彫像(日天月天、宝剣、ショケラ、三叉戟、矢、宝輪、弓)
標準型三猿像


刻銘「元禄五壬申年五月十一日(1692) / (交名25名略) / 南無阿弥陀仏 / 奉造立庚申塔為二世安楽」※三庚申の日造立。
原刻字「南無阿弥陀佛 / 奉造立庚申塔爲二世安樂」
御尊容(立像、一面六臂、唐破風笠付角柱型)、その他像容・彫像(日天月天、瑞雲、蛇、宝剣、羂索、戟、矢、宝輪、弓、蓮華)
一邪鬼像と二鶏像(牡牝一対)
聖観音菩薩像庚申塔
刻銘「□〜□月吉日 / (交名10名略) / □〜□待庚申供養」
御尊容(立像、舟形光背型)、その他像容・彫像(未敷蓮華)
庚申塔群の向かって右側にはいくつかの板石や自然石を積み上げて造った塚の頂点に「塞大神」と刻んだ石塔が建立されています。こちらは「塞の大神碑」という名称が付けられており、『文京区の石造文化財-庚申信仰関係石造物調査報告書-』には庚申塔として収録されています。

この一里塚について『江戸時代商標集』115頁には、「そこに明治明治六年重建の塞神碑と庚申碑とがあったが、同四十三年七月渡邊氏の篤志で根津神社後苑に移したといふ。」とあります。
また、『文京区の散歩道』113-114頁によれば、火災に遭い欠損したという庚申塔は文化五年に建てられたものであったそうです。
文字庚申塔
刻銘「明治六年九月(1873) / 秋巌 / 塞大神」
自然石型(板石型)
根津神社の所在地 35.72031850649369, 139.76005713082793







