東京都新宿区大久保1丁目16-15の全龍寺(訪問日:令和7年4月26日)
以前掲載した新宿区指定有形民俗文化財「全龍寺の庚申塔」の向かって左側、鉄の門の裏側の石仏群の中に背面をコンクリートで固められた無銘石塔があります。
『性神探訪 : 東京に残る土俗信仰跡』を表した原浩三氏は同書でこの石塔を「西大久保金竜寺の道祖神」として阿弥陀如来像庚申塔とともに報告しています。金竜寺は全竜寺の誤植と思われます。この異質な石の碑面にはかつて男根状の彫像があったそうなのですが、原位置から現在の全龍寺へ移す際に破損してしまい、見る影も無くなってしまったそうです。
西大久台金竜寺の道祖神 新宿区西大久保二の一七八
西大久保の道祖神は古くからあった。青梅街道に並行して、新宿方面から柏木を通っての堀の内参詣路は、大正初年に僕らの小学校遠足にも通った。この道の西大久保二丁目一八八の北側の角の、人家と人家の軒が相接した所にあったが、近年街路拡張で金竜寺内に移転されたのである。
この移転のため位置はさらに北方に移り、表面もヒビが入って、削落し文字の痕も不明で、自然石らしく、約一メートルのリンガ形は、その板状のまま混凝土にはめこまれて残っているのだ。原浩三『性神探訪 : 東京に残る土俗信仰跡』八重岳書房、43-44頁
見ての通り、完全に自然石と化してしまっています。しかし、コンクリートで固定されるといった同所に置かれた石仏群よりも明らかな厚遇を受けている点からも、これが単なる自然石ではないことを物語っています。
こうなった理由を「碑面にもヒビが入って」と説明していますが、もしかすると男根を模っていたために土地の風俗を乱すものと見做されて、故意に破壊された可能性もあります。もちろんこれは単なる素人の推測なので実際はどうだったかは分かりません。
最後に、全龍寺さんは檀信徒以外は境内全域立ち入り禁止ですが、石仏群のあたりまでは撮っても良いという警備員さんの許可を得た上で撮影しました。
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全龍寺の所在地



